浮かばない船は無くて浮く必要の無いからだがある

風呂場の湯が、わたしのからだのにまわりに纏わりつく。皮膚が水の浸入を防ぐが、手を持ち上げて、静かな水面に雫をたらす。

欠伸をした。ぬるま湯が好きで、あまり温いと何故か熱いのが好きな彼に怒られるのだが、それでもぬるま湯が好きだ。眠たくなる。

胎内回帰願望でもあるのか、とふと思うが、それもなんだか可笑しいので、恐らく違うのだろう。もう少し何かに似ている気がする。彼よりは低く、でもわたしよりは温かいのに、何故か冷たいような温度で、時折困惑する。

冷たくあしらわれたり。温かく受け入れられたり。

皮膚が弾くのは湯だけでなくて、己の汗腺からにじみでる汗も眼の涙腺から流れ出る涙も、体の一部からされる精液も、口の端から漏れ出てしまう唾液も、弾いてしまう。水分を受け入れながら流すことで確認している。