2019-01-01から1年間の記事一覧

水面のゆがみに顔を映し、

水面のゆがみに顔を映し、己の顔の愚かさに笑った。 楽しそうだね、と彼が傍らで言う。楽しいことなんて、と私は返し、何もないよ、と彼を見返した。 殺してえなぁ、と彼の背中を見ながら思う。それはもう、腹が立つほどに。やめておいてはいるのだけれど、…

大事なものは骨と其れ以外だ

生きて行く上で大事なのは身体がギシギシなることで、だからからだがぎしぎしなる私はちょうどいいのだと思っている。肋を触ってみると、皮膚から少し浮いているだけだ。 奥の扉はいつもしまっている。なんかたまに内臓の位置変わってるんだよ、と彼はその向…

欲望について、五大欲求の弁解と逃亡

性欲 かれからてのちからがぬける かれのてをすりぬけるわたしと そのてににぎられることのなかったわたしのうではせかいをみのがしてしまう 全てを殺す準備を常にしている。男に勝てない腕力じゃない。男に押さえつけられると力を失くすのは女の本能だ。つ…

どうしようもない

痛みに堪える様に丸くなった背中をどうしてやろうかなんて一瞬考えた自分死ね。 かなしんでいるんですかという言葉すら軽くなる自分死ね。 頑な表情をどうにかしたくても出来ない自分死ね。 ゆるゆる夕陽が過ぎていって世界なんてみんな死ね。そんで私も死ね…

工場

そいつらはわたしの目の前に現れ、面白がりながら走り去っていった。 私のことを背中で笑っている。 せいぎのみかたはこうじょうにすんでいる。でももうすぐこわされてしまうんでしょう、猫を一匹残したまま。 わたしをさがしだしたかれらはわたしをさがして…

彼の名は

大体その男が黒幕だといってしまえば確かにそうだ。 私を扱えるのは彼しか居なく、また彼を疎み続ける彼にだってそれは漸く出来たことであって、本当の所、彼がどういう男なのかを解っていなかったに過ぎない。実質、そんなものは彼だって知りはしなかったの…