2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

鉛色の青春

血の流れる傷口から心臓の音がします。 止まれと思うのですが止まらず、さらに流しているようです。心に正直な身体に生まれてよかったと思いました。 朝起きて見た空は白い穴だらけでした。雲は傷口を塞ぐだけで、何もしてはくれませんでした。空の傷口、胸…

愚かだからさ

歪んだ視界の中で涙は一貫性のない暴力的行為。 我侭な生き物の首を跳ねていく皇女様が一番の我侭だったので首を跳ねられてしまいました。 バウンドする首。その顔は笑っている。何時でも彼女の至福の笑顔。どうせアタシには勝てないのよ、などと彼女は言っ…

ぬくもり

ぬくもり、というあたたかさそのものがわたしには解らない。 ヤケドをする程熱いものなどは解るのだけれど、何故か人間の体温とあたたかいものの差異が解らない。そう言ったら困った顔をした彼は、やけに敏感でいけない。 あたたかいものはあまり好きじゃな…

浮かばない船は無くて浮く必要の無いからだがある

風呂場の湯が、わたしのからだのにまわりに纏わりつく。皮膚が水の浸入を防ぐが、手を持ち上げて、静かな水面に雫をたらす。 欠伸をした。ぬるま湯が好きで、あまり温いと何故か熱いのが好きな彼に怒られるのだが、それでもぬるま湯が好きだ。眠たくなる。 …

ふたり

何時から二人に成ったんだろう。二人というのは、合理的ではない数字だ。わたしは何より、向き合うことを恐れているのに。 なあ、こんなはずじゃあなかったのに。二人になんか、成らなければ。 君もわたしを見捨てていれば良かったのに。もし見捨てられてい…

けっして悪いことはしないのだと思った

彼女の笑顔が余り誰にも望まれてなくて、それを彼女は楽しがっているらしかった。 意外性を己で作り出してそれを楽しむ。莫迦みたいな女だ。脳まで腐ってしまったらしいその女は、両手を広げた。飛びたい、と言った。 飛べない。飛べない。それを解っていて…

飴玉を舐めていると時たま苦くなりたい自分に気付く

ぴりぴりと、尖った刺激的な味になりたいと、時たま自分に思う。 自分が、なりたいのだ。口の中に甘さを求めている分、自分は甘くないのかもしれない。 過食気味だと、一度だけ言われたことがある。甘いものに関しては過食気味だと、あの笑い顔で言われた。…

町からの誘惑とともに

知らず知らずのうちにどこかへ迷い込むのが好きだ。どこかへどこかへと唱える。 誰もいない場所へ時たま行きたくなる。そこがわたしの場所のなのかもしれないからだ。わたしは帰っていってしまうのだろうか。 慣れきってしまった身体を解すみたいに、わたし…

鳥葬

「死体に、ハゲワシが群がった。一斉に翼が視界を埋め尽くし、私は呆然としてしまい、結局フィルムに、鳥の嘴が内腑を来世へ啄ばむ光景を、捉えることが出来なかった。」 読んだページにきちんと栞を挟み、彼は彼女の方を伺い見た。彼女は彼に背を向けて、何…

紺碧に沈む岸壁 

完璧はあるかな、と彼はかしこぶってわたしに尋ねた。首を振って否定する。 ならばそれになろうとは、と彼はけしかけるように笑った。 彼が笑っている。笑いすぎだ、とわたしは感想を言った。彼は笑うだけで答えてはくれなかった。感想なのに、わたしはそれ…

衝動を補う

力を込めた指先がひくいひくい唸り声に触れる。 あと少しですよ。力の中心から徐々に変色する肌。赤から紫へ。確かに近付てくる終わりの一瞬。締めた喉元から出てくる声は音にならずひゅぅっと息が抜けていくだけでどこか間抜けだ。 薄く開いた唇が言葉をな…

衝撃

声がかれるほどの魂の震えは無いとしても心臓は止まるかもしれない。 彼はわたしのことを好きなのかもしれないと言ったのだが、その先を言わない。言わないならわたしは聞かない。 彼は眠るとき以外の時間眼鏡を外さない。眼は閉じている。べつに、泣いてな…

雑草

売っている食材があまりに哀れに見えて悲しむ。今もなお誰かが死んでいると思ったが実は夢見の悪さに悩む自分を確認しただけ。 目に痛いものがある。頭上で輝く太陽が、人の目玉を焼き殺す。起き上がって闇に沈め。例えようのない世界観に限って其の穴は浅く…

警告

振るった剃刀の血のほとばしり方が、映画のようで苦笑い。 朝から呼び出しを食らって、まだ顔も洗っていない。正気の沙汰じゃあない。わたしはだらだらと力を抜いて生きているというのに。 わたしの目に浮かぶのは誰かの警告で、今すぐ此処から、と、その先…

問答

誰かの声が誰かを脅かす。誰かの声が誰かを溢れさす。誰かの声が誰かを? ひやかしている。ちがう。ならどういうことだと。どういうことでもない。ならどういうつもりだと。どういうつもりでもない。そんざいのいみすらひていを。ちがう。ならことばをつむい…

これまでの証拠を隠す

悲しみに咲く花は咲かないもの、と彼女が言う。 彼女の中の本当は本当だったからこんな壁の中にいるのだけれど、わたしはそれに満足しているので貴方は満足しているのと聞いたらその答えが返ってきた。 哀しくはないのか、そうなんだ、とにっこりわらって聞…

あっかんべえ

あんたはそうやって何でもない顔をする。 いつだって本当のぼくをみてないんだからさ。 それが悔しい。それが悲しい。それが、何。 愛の言葉なんか決して要らないのに、 あんたがそんな素振りを見せるから ぼくは負けた振りをして受け入れてあげるんだ。 そ…

幻聴

彼はとおったきれいなこえでさみしそうでもない顔で私に助けてとゆったのだ。 聞き逃してしまう。 声の通った先を私は見ない。見えない。空気に攫われていった。かっこいいぞ空気。素晴しいぞ空気。でももっかい戻ってきて。もっかいききたい。 そらがたかく…