真意などなくそれでいてただしいみちを?
うずうずする。井戸の水を引っ張り出して、一つ口に含んで、吐き出す。
口の中にじゅくじゅくした水分が残り、がさがさの舌がぱきりと吸収した。
人間の身体は吸収する。こうして喉が渇いていたら水を飲む。吸収しなくてはなるまい。吸収しなくてはならない、そういうものだ。人間の吸収の喜びは体が一番よく知っている。
口をパクりと開いて閉じた。あの感覚に酔いしれるのではなく、欲しかった。
彼が欲しくてたまらない。口を開いて閉じた。
薄く笑っているの気付いた。彼が欲しくてたまらない。自分の口の端を食いちぎる。こんなんじゃ、駄目なのだ。
ならば彼を吸収して、彼が彼でなくなったとしても?ああ大丈夫だ、大丈夫なんだ。彼は彼でなくなるなら、私が彼になるのだから。
自分の胸に爪を立てる。欲しくてしょうがない。