荒野の大地にすらすべては帰っていくのに
恐らく自分の何かはかえらないのだろうと思う。
己が骸になっても何の糧にもならず、その土地を枯らすだけだろう。己の手の平を見る。
基本的には何かを掴んだり鈍器を掴んだりなどと忙しいのに、握り締めたりこの手でなにかしたことは余り無い。
握ったり開いたりしていると、横で寝ていた彼が起き上がって、いきなり足で私を蹴飛ばした。
ごろん、とひっくり返るように転がって、痛む腹を押さえ、起き上がった彼を見る。おはよう、というと、まだ夜だよ、と返された。また考えすぎてるんだろ、と言いながら、私を手招くので近寄ったら、布団の上に転がされた。がじ、と首に歯型がつくくらい噛まれる。
時折このまま噛み千切って欲しい気がしてきてしまう。そうしてくれれば、もう少し何か実になれる気がする。
全ての行為に痛みは重要じゃない。死にたくないだけで、ただ死にたくないためだけに痛いだけで、本当は行為に重要じゃない。辛いだけだ。その辛いことすら私には少し不明だし、彼の事が嫌いでない限りは辛くない。
けれども時折噛み付くなら千切りとって欲しいと思う事がある。食いちぎって、口から出る血まで啜って、どちらかといえば無駄にして欲しくなかった。死んだら醤油かけて食われても良いから。
彼は所々不味い、と言いながら下肢に頭がおりていく。そうだろうな、と私も思う。
でも身にして欲しいのだ。排泄されても良い。ただ貪られるだけの理由が欲しい。
臍のアタリを彼は噛んだ。ふ、と息を吐くと、彼が上目遣いでコチラを見た。表情が怒られたい子供のようだったので、それをみて少し笑ってしまった。
怒らないから、空腹なら食ってしまえば良い。
無駄な私を無駄にしないでくれるのはこの人だけな気がした。