うつくしい結晶

真珠というものは痛みの結晶なのだと言う。その組成に基づいて言われる話だ。

 

貝の中にちいさなつぶてを入れる。貝にとっては異物だ。そのままにしておいては肉を咬み血を腐らせて命すら縮める事になる。だから貝はつぶてを真珠に変える。胎内から吐き出した物質で異物を包みこみ、その光沢と柔らかさで持っててなづけ、己の身体の中に置いておいても問題の無い物へと作り変えるのだ。

真珠というものは痛みの結晶だ。その色彩も光沢も二次的なものにすぎない。真珠をうつくしいと思うのは人間が勝手に言っているというだけのことだ。現に、貝ならばどのようなものでも真珠はつくれる。宝石として扱われるような『真珠』を作ることが出来るのはごくごく稀な貝であるというだけのこと。

 

その痛みすらもうつくしいと呼ばれるものに変えることが出来る者は、稀有だということだ。