けだものでしょう

人間なんて生まれ出でてから死ぬまでけだものでしょう。軽やかに口で笑って。昔の人は蛍の光で勉強したってね、頭に残っている別の国のお話。蛍の光でなにを勉強すると言うのだ、働かなければ死ぬ。

瞼を舌で押し上げて眼球を舐める。瞼の粘膜、睫毛の付け根を舐められる感じ。上向きに泣いているような感じだ。

人間なんて生まれ出でてから死ぬまで泣き虫でしょう。

世界が軽やかに終わりますように踊るように。死ぬことだけはありませんようにせめて世界より早く。

 

焼け付くのは太陽だけで充分ですから。

まぶしい世界なんて要らないんです、聞いたことくらいあるでしょう?鳥は太陽がないと駄目なわけじゃないんです。彼らに要らないのは飛べない世界で、闇で、飛べないなら闇の中で見える目なんていらない。だからカラスは黒くなったんです。貴方の望まぬ闇になってあげようとしてるの、解ってる?生きる暗闇は死骸を啄ばむけどもっと食べてるの人間のごみですから、解ってる?星に祈りを捧げた覚えがないの、ねえ解ってる?

 

冷たい人間が冷たくならないためには生きるしかありませんでした。激しい水音は滝の音ではありません体に流れる。血流が恐ろしいと言いながら瞼を舐める。水に生きるかえるに不要なそれ。

 

人間なんて生まれ出でてから死ぬまで馬鹿でしょう。

何時か数えるようになった口調。指先の折れる様子。視線。脱落。

ああしょうもな、連想。けだものでしょう、とは言ったが、まぁ確かにそうであって私も獣であるからしてこの行為は無効である。どちら側にも飼い主がいない。

 

口のある人間は真っ直ぐ孔が舌まで続く。かと思いきや胴体までである。実際人間は体の胴体で立ち止まったままだ。これが進化だろうがなんだろうが、普通いっぽん貫くなら穴はしっかり足の裏まで欲しいものである。

つまり口から入り尻の穴からでるのではない。もっと他に入り口がある。誰か他の生き物の意識が流れ込むような、そんな穴がある。

 

人間は空虚だ。カラで中身がない。もう名前からしてそうだ。「からだ」胴体はこんなにも己の中身のことについて日記しているではないか。

日々記されるというよりは日々滴る。したためるよりも滴ってしみになって誰も消せないし消さないし消したくない。

 

指折り言葉の数を数える。

けだものなんてみたこともない。