2018-11-05から1日間の記事一覧

終幕はまだですか待ち望む結果の先

わたしは長い間ふたつのものに恋をしていた。 たったふたつの尊ぶべきものに向けるいっさいの感情はいつだって美しくなどなくて、可能ならいつだって切り離してしまいたいと思うほどに重く苦々しいものばかりだ。例えば敬愛であり、羨望であり、憧憬であり、…

おもひでぼとぼと

奇麗な切断面からまだ流動を続ける血液が次から次から流れていて、室内は慣れた香りでいっぱいだ。随分あっさりやられたんだなあと最初の感想はそれだった。素直に。だってあんなに、あんな叶わない場所に立っていて何度も届かねえと思ったのに、あんたの死…

やさしいぜつぼう

そのいきものが、すこしずつだけれど確実に死に近付いていることは遠眼にもはっきりとわかった。狭い車道のまんなかに横たわるそれに気付いて、先輩はぎゅっと眉根を寄せる。 「あ」 みじかくあげられた声に籠もる感情が何なのかはわからない。ちなみに私は…