目を閉じておいた

起き上がるようなまなざしをした。起き上がらないままみつめ返した。見知らぬ誰かが素知らぬ振りで見つめ返してきた。目を閉じておいた。

 

世界が滅ぶと思う。多分神さまのせいじゃなくて自分のせいでもなくて誰かのせいでもなくて、自分がなにもしなくても、世界は滅ぶと思う。阻止しているつもりは無い。ただ目が痛くなることがたまにあるだけなのだ。目を閉じておいた。死にそうなぐらいがちょうど良い。

 

背中のほうに彼はいるだろう。いつも彼は笑いながら気難しいことを考えていてそして彼もまた死にたくはないのだ。

暗黒は枕に優しい。そして人に優しくない。世界は滅ぶまでを待っている。それが怖い。

髪の毛が枕にこすれて衣擦れのような音を出す。背中の彼は何も言わずに眠っている。いずれ彼も死ぬだろう。誰の手でもなく。誰によってでもなく。自分はそれを早めなければいけない訳でもなんでもない。ただ自分の邪魔はされたくなかった。

 

 

明日は曇るだろう。

 

見えない天気を予想するのが好きだ。おそらくその天気を見ることが無い日に限って。

限定されていく。おそらく白いベッドの上。もしくは見えない死刑台の上。

 

銃殺を望む。

少しでも銃殺を望む。

恐ろしくはない。銃殺を望む。

 

願わくば死刑ではなく処刑をしてほしい。銃殺を望む。

 

 

世界なんて滅べば良いと思う。ただ自分の生きているうちはやめてほしいのだ。