紺色の手紙
身体の半分を相手に預けてまるで産まれ落ちたかのように心の半分をいつの日にか相手の中に残して来たかのように忘れようとも常日頃君が恋しくて仕方ない。
分かりやすくいえば「あなたなしでは生きられない」
ふざけてわらってじゃれて泣く、永遠に続くと信じていた幼い日の余暇を懐かしみ生きている。
他人を憎まないといけないだけあの時傷ついたぼくを。憎しみだっていいからなんだっていいから強く強く僕は君の中に残っていたいだけだ。忘却が怖い、変化が怖い。できればもう誰にも笑わないで欲しい。
心の中に雪が降る。雪で感情に蓋をしたかった。でも本当は解ってる、雪の向こうには君がいる。
湿り気を帯びた夏の空気。ふいに雨雲で灰色と黒のマーブルになっていた空のから雨が降り始めた。涙のような、アスファルトの黒と天の黒を繋ぐ雨は銀色。
心の半分をお互いの中に残して来たかのようにからだの半分をお互いに預けてしまったように変わっても変わらなくても足りない半分は全て、答えは本当にずっと近くにあったのに。
君は覚えているのでしょうか。
あの時僕等は下らない、それこそ何の価値もない、アイデンティティの確立に躍起になっていましたね。
今となっては良い想い出、謂ってしまえばそれまでですが、あの日々のことを毎日のように僕は思い出しているのです。
僕は君に、君は僕に、随分と酷いことをしましたね。心身ともに痛め付けて、ついぞ殺してやりたいとさえ思っていたのは、冗談等ではありません。君も、きっと、そう。あの頃はあの不可解な感情の塊を、僕等は愛だと信じて疑わなかった。
嗚呼、愚かしい。
最近になって気付いたんですよ。何故僕等が互いにあれ程執着し合っていたのか、そのことが。過去なんぞ顧みない君には興味のない話でしょうか。こんなことを謂えば、君は憤慨する。しかし。いいですか。
僕等は哀しい程によく似た生き物だったのです。
おや、いけませんね。前置きが長くなりました。君に謂い忘れたことがあったんです。だから、それを伝えようとこの手紙を書いた。顔を見て伝えること等出来ません。何故か。僕は君が嫌いです。もう顔も見たくないんです。だから、そう、
こうして、
こうして、
こうして、
こうして、
こうして、
手紙で。
僕は君が嫌いです。体には気をつけて。憎んでいました。ごめんなさい。僕は君が大嫌いです。ありがとうございました。僕は君なんて嫌いなんです。君は僕を憎んでいるでしょう。死んでしまえと、殺したいとも思っていました。愛ではなかった。嫌い嫌い嫌い。
だから、
こうして、
手紙、で。
さ よ う な
「馬鹿じゃないの」
最後の文字が滲んで読めない。