あのひとがそれを甘いものじゃあないって気付くのは

これが愛だとかなんとかいうものなのであればこんなにも痛いものは無いなと思う。痛くて痛くて壊れそうに内部から引き裂いていく。けれどその痛みはハマってしまった間中は麻痺したように気付かなくって、ただ気持がよいだけの罠だ。何もかもどうなってもイイと思ってしまう。相手さえ居れば世界が終わったっていいと思ってしまうような。ああ、世界が終ったらそのひとを失うという事にも気付かずに。

 

それに自分が罠にかかっていたんだと気付くのはそれが覚めてしまった頃。一人の相手が周りにあったとろとろとした甘いものは本当はどろどろとして居るものだという事に気付いてしまえば。それは体中にからみついて離さなくて、なんだと思ってしまったらそれは最後。それが甘いと思っていた自分がばからしくなってしまう。躍起になって剥がそうとすると、ぺらりと剥がれる訳もなくって、ただ後に残るのは苛立ち。まだ罠にはまるもう一人の人間に押しつけられるのは絶望。

 

勿論、それは只の妄想だ。それは只の妄想だ。

私は愛なんて知らない。きっとこれは愛ではないから。そうだきっとこれは愛ではないから。

 

だからきっと終る時に苦しむ事何て無い。それにこれが愛とかなんかそういうロマンチックなものであるのならば、私は甘いもののなかにひたっているはずなのだ。こんなに心配ばかりするなんて、不安になるなんて、おかしい。そうだ、これは愛ではない。

 

 

妄想の中の仮定を否定しておいて自分を重ね合わせて安心するなんて矛盾しているにも程があるなあと思考をすり替えて、暑さに身を任せた。じりじりとあたまの中までも焼く日の光に体を任せ、沈む。