考えることの放棄

消えてなくなるのが怖い。火に包まれて肉が無くなるのが怖い。狭いツボに詰め込まれて骨のかけらも消えない石の中に閉じ込められるのが怖い。怖い。居なくなられるのが一番怖くて、でも自分が居なくなってもきっと誰も怖く無いと思っている。時々たしなめられそうで、わりと頻繁に人の目を見ない。

自分は考えが無い。時折考えても休むようなもので、それに似ているのならやはり自分の考えは下手な考えなのだ。

嗜められる事に慣れていない。言われる程に対して大きい事など、自分は何一つしていない。厭な事は見たく無いものを見る事ばかりで、だからやっぱり嗜めるような目も見たく無いのだ。

怒られる事は怖い。褒められる事も怖い。

欲される事も毒される事も怖くは無いのだけれども。

 

連日降った雨で車がどろをはねていく。この時間この場所は光が当たらないのに、凍えるほどに寒いのだけれども冷たいとも暖かいとも言えない空気に締め付けられていて、異様で微かな緊迫感がどろどろと漂っている。

人影がふと出てきて、誰かと思ったら彼だった。一瞬人じゃ無い様に見えてしまったけれど、時々有る事。

生きることは時々気分が悪い。それでも時々なので所詮は生き物だ。

この場に崩れ落ちて号泣したいような気分になる。ああ、なんだかとても厭な感じになる。こんな気分も、もしかしたら薄れて消えてしまえば無くなったのだろうかとふと考えた瞬間、馬鹿、と射抜くような声が耳を突いて、矢張り厭な気分になった。