ぬくもり

ぬくもり、というあたたかさそのものがわたしには解らない。

ヤケドをする程熱いものなどは解るのだけれど、何故か人間の体温とあたたかいものの差異が解らない。そう言ったら困った顔をした彼は、やけに敏感でいけない。

あたたかいものはあまり好きじゃない。眠たい。飲み込まれるのも気付きそうにも無いので、暖かいか、冷たいか、その隙間が別れていないといけない。溝は深く無いといけない。眠ってしまったら終わりだ。時間が過ぎて行く事も、そのまま終わりだ。終わっていってしまう、無くなっていってしまう。

 

鮮明だ。赤い色も、呆然とした自分の足の感覚も。テーブルに凭れた時の自分の吐き気。存在感。消してしまいたいもの全部。

鮮明だ。わたしが生きて来てこれほど鮮明な事など、無い。

あたたかいものは解らない。自分より冷たい者など居た事が無い。底辺に、臥し、冷たいもの。